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『寝酒のつもりが、眠りを浅くしていた ― アルコールと中途覚醒・夜間頻尿』

はじめに

「寝る前に一杯飲むと、
すっと眠れる。」

そう感じて晩酌を
習慣にしているのに、
夜中にふと目が覚めてしまう。
そんな経験はありませんか。

前回は、夜間頻尿の背景に
水分の量だけでなく、
塩分や自律神経が
関わっていることを
お伝えしました。

実は、お酒もまた、
夜の尿を減らすホルモンや
眠りの深さに働きかけ、
夜中の目覚めに
関わっていることが、
研究でわかってきています。

寝つきを助けているように
感じる一杯が、
眠りの後半を浅くしている
可能性もあるのです。

一方で、こうした影響は、
飲む量や度数によって
変わることも
報告されています。

今回は、アルコールと
中途覚醒・夜間頻尿の
関係について、
最新の研究データをもとに
見ていきます。

Ⅰ. お酒で「眠れる」と感じる理由

寝る前のお酒を、
眠るための助けとして
使っている人は、
人口の**約10〜28%**に
のぼるといわれています。

お酒が眠りを誘うように
感じるのには、
理由があります。

アルコールは、脳の働きに
ブレーキをかける物質(GABA)の
作用を強め、
興奮を伝える物質の
働きを弱めます。

さらに、眠気のもとになる
アデノシンという物質を
増やすことも
わかっています。

こうして脳の活動が
鎮まることで、
眠りに入りやすい
状態がつくられるのです。

実際に、飲んだ夜の
眠り始めの数時間は、
深い睡眠が
6.4〜9.6分増えたという
研究もあります。

ところが、27の研究を
まとめた2025年の解析では、
意外な結果が出ています。

全体で見ると、
寝つくまでの時間の差は
約2分にすぎず、
はっきりした差は
認められませんでした。

寝つきが確かに早くなったのは、
体重1kgあたり
約0.85gの
アルコールを飲んだときだけでした。

体重60kgの人なら
純アルコール約50g、
ビール中瓶で
約2本半にあたる量です。

また、「早く眠れた」という
感覚はあっても、
測定上の寝つきは
変わっていなかった
という報告もあります。

寝酒で「眠れた」という実感と、
実際の寝つきには、
ずれがある可能性があります。

Ⅱ. 眠りの後半に起きていること

私たちの眠りは、
前半に深いノンレム睡眠が、
後半にレム睡眠が
多くなるのが自然な流れです。

レム睡眠は、記憶の整理や
感情の調整に関わるとされる
大切な眠りです。

寝る前に飲んだお酒は、
眠っている間に分解され、
後半には鎮める作用が
切れていきます。

2つの研究では、眠りの後半に
深い睡眠が5.2〜6.4分、
レム睡眠が11.0〜17.4分
減っていました。

Ⅰ章で紹介した解析でも、
レム睡眠が始まるまでの時間は
平均18.0分長くなり、
その量は平均11.3分
減っていました。

この変化は、体重60kgの人で
純アルコール約20〜30g、
ビール中瓶1本〜1本半ほどの
少ない量から起きていました。

前半の深い眠りと引き換えに、
後半の眠りが
浅くなっているのです。

その理由として、
Ⅰ章で触れたアデノシンが
前半に一気に働き、
眠りを保つ力を
「前借り」してしまう可能性が、
動物の研究から示されています。

また、アルコールが
分解されてできる
アセトアルデヒドなどが、
身体を目覚めさせる方向に
働くことも考えられています。

夜中に目覚めている時間
そのものについては、
まだはっきりした結論は
出ていません。

それでも、浅くなった後半の眠りは、
夜中に目が覚めやすくなる
土台になると考えられます。

Ⅲ. お酒と夜間頻尿の関係

前回お伝えしたように、
夜は抗利尿ホルモン(ADH)が
尿を濃くして量を減らし、
眠りを守っています。

健康な男性10名が、夜7時から
ビールか同じ量の水を飲み、
翌朝まで調べた研究があります。

飲んでしばらくの間は、
ビールでも水でも
ADHは同じように下がりました。

ところがお酒の夜は、
ADHが下がった状態が
長く続いていました。

その結果、翌朝までの尿量は、
水の約1,650mLに対して、
ビールでは約1,960mL。
同じ量を飲んだのに、
約300mL多く出ていました。

お酒は、夜の尿を減らす
仕組みを鈍らせるのです。

なお、お酒と一緒に
水を飲んでも、
結果は同じでした。

一方、60〜75歳の男性が
昼食時に純アルコール30gを
飲んだ研究では、
ビールでは変化がなく、
尿量が増えたのは、
ワインや蒸留酒など
度数の高いお酒のときでした。

尿への影響は、
飲む量と度数しだいといえます。

さらに、Ⅱ章で見たように
後半の眠りが浅くなると、
わずかな尿意でも
目が覚めやすくなると
考えられます。

翌朝の喉の渇きも、
反動でADHが上がり、
身体が水分を取り戻そうと
しているサインとみられます。

尿が増えることと、
眠りが浅くなること。
この二つが重なって、
夜間頻尿につながるのです。

Ⅳ. 眠っている間も高ぶる自律神経

眠っている間は本来、
身体を休める副交感神経が
優位になる時間です。

フィンランドの会社員
4,098名を対象に、
飲んだ日と飲まない日の
眠り始めの心拍を
比べた研究があります。

飲んだ夜は心拍数が上がり、
副交感神経の働きが
下がっていました。

身体が回復している時間の割合は、
1杯程度でも9.3ポイント、
多く飲んだ夜は
39.2ポイントも
低下していました。

体重80kgの人が5杯飲むと、
最初の3時間で、回復の時間が
約45分短くなる計算です。

この傾向は、運動習慣のある人や
若い人でも変わりませんでした。

お酒の夜は、眠っていても
身体は休みきれていないのです。

寝酒が習慣になると、
こうした高ぶりが
毎晩くり返されることになります。

自律神経の乱れが続くと、
眠りの浅さや
夜中の目覚めにも
つながりやすくなります。

当院では、鍼・灸で
身体の緊張をゆるめ、
自律神経のバランスを
整えることを目指しています。

寝酒に頼る前に、
自律神経を整えるという
選択肢もあります。


おわりに

寝る前の一杯は、
寝つきを助けているように
感じられます。

実際には、
後半の眠りを浅くし、
夜の尿を増やし、
眠っている間も
身体を休ませにくくしていました。

しかも、その影響の多くは、
飲む量が増えるほど
大きくなっていました。

お酒を楽しむことを
やめる必要はありません。







ただ、眠るための
「薬」として使うのではなく、
量や度数を少し控えめにするだけでも、
夜の眠りが変わってくる
可能性があります。

それでも変わらない場合は、
自律神経の乱れが
関わっているのかもしれません。

そのようなときは、
どうぞRE-SO-LVにご相談ください。


出典・参考(抜粋)
・Gardiner, C. et al. (2025) Sleep Medicine Reviews.
・Thakkar, M.M. et al. (2015) Alcohol.
・Sailer, C.O. et al. (2020) American Journal of Physiology-Renal Physiology.
・Polhuis, K.C.M.M. et al. (2017) Nutrients.
・Pietilä, J. et al. (2018) JMIR Mental Health.

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