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『眠りの材料はどこから ― タンパク質摂取と睡眠の科学』

はじめに

「タンパク質」と聞いて、
多くの方が思い浮かべるのは、
筋肉づくりやダイエットの
ための栄養素ではないでしょうか。

しかし、タンパク質には
もうひとつ、あまり知られていない
大切な役割があります。

それは、夜の「眠り」をつくる
ための材料
になっている、
ということです。

材料が足りなければ、
どれだけ「今日はしっかり
寝よう」と思っても、
身体はその準備を
整えることができません。

今回は、タンパク質が
どのようにして眠りの質と
結びついているのか、
その仕組みを見ていきたいと思います。

Ⅰ. 眠りをつくる”材料”

私たちの身体は、
眠るための神経伝達物質やホルモンを、
自分の力だけで作り出しています。

その代表が、セロトニン
メラトニンという物質です。

セロトニンは日中、心を落ち着かせ、
夜になるとメラトニンへと姿を変えて、
眠りへ誘う働きをします。

ところが、この2つの物質は、
体内で無から作られるわけではありません。

材料となるのは、
トリプトファンという
アミノ酸の一種です。

そしてこのトリプトファンは、
体内で合成することができない
「必須アミノ酸」に分類されます。

つまり、食事、
とりわけタンパク質から摂るしか、
手に入れる方法がないのです。

トリプトファンは血液にのって
脳まで運ばれ、
そこでセロトニンとなり、
夜にはさらに
メラトニンへと変わっていきます。

タンパク質をきちんと摂るというのは、
いわば、夜の眠りのための
原材料を仕入れておく作業
だといえるのです。

Ⅱ. 量を増やすと、眠りが変わる

まず注目したいのは、
タンパク質を”どれくらい”摂るかという、
摂取量に関する研究です。

海外で行われた臨床試験では、
減量中の成人に、
タンパク質の割合を変えた食事を
摂ってもらいました。

摂取エネルギーに占める
タンパク質の割合を、
10%、20%、30%と
段階的に変えて比較したところ、

タンパク質の割合が低いグループほど、
睡眠の質を示すスコアが悪化

していることが分かりました。

別の試験では、
より長期(16週間)にわたって、
標準的な量のタンパク質を摂る
グループと、
その約2倍量を摂る
グループを比較しています。

その結果、
標準量のグループでは
睡眠の質にほとんど変化が
見られなかった一方、

多く摂ったグループでは、
睡眠スコアが着実に改善し、
「眠りが浅い」状態から
「良い睡眠」の水準へと
変化していきました。

つまり、減量中であっても、
タンパク質をしっかり摂ることが、
眠りの質を守る
ひとつの鍵になる
可能性があるのです。

Ⅲ. どこから摂るかで、違いが生まれる

タンパク質は、
含まれる量だけでなく、
“どこから摂るか”によっても、
働き方が変わってきます。

その鍵を握るのが、
先ほど触れたトリプトファンと、
それ以外のアミノ酸との
“比率”です。

肉や魚などの動物性タンパク質は、
トリプトファンを含む一方で、
それを上回る量の
別のアミノ酸も豊富に含みます。

この別のアミノ酸は、
脳へ運ばれる際、
トリプトファンと同じ通り道を
奪い合う”ライバル”のような
存在
です。

そのため、
動物性タンパク質を多く摂っても、
トリプトファンが脳まで
届きにくいことがあります。

一方、大豆や
ナッツ類などの植物性タンパク質は、
含まれるトリプトファンの割合が、
相対的に高いことが分かっています。

実際に行われた調査では、
植物性タンパク質由来の
トリプトファンを多く摂っている人ほど、
睡眠時間が長い
という関連が見られました。

同じ「タンパク質を摂る」でも、
何から摂るかによって、
眠りへの届き方が
変わってくるのです。

Ⅳ. 材料を”活かす”ための土台

ここまで、
タンパク質という材料の
“量”や”質”に注目してきました。

ただし、先ほどの試験でも、
30%のグループは20%のグループより
明確に優れていたわけではありません
でした。

材料が”足りている”状態になれば、
そこから先は、量を
際限なく増やしたとしても、
睡眠の質が比例して
良くなるわけではなさそうです。

材料をきちんと確保することは
大切な土台です。

しかし、材料さえ揃えば
それで十分というわけではない、
ということも見えてきます。

トリプトファンという材料を、
きちんとセロトニンやメラトニンへと
変換していくためには、

自律神経が整い、
体内時計が正しく
リズムを刻んでいることが
前提として必要です。

鍼灸には、
この自律神経の乱れに
働きかけ、
体内時計のリズムを
整えていく役割があります。

食事で材料を届けることと、
鍼灸でその材料を
活かせる身体をつくること。

このふたつが揃って初めて、
質の良い眠りに
近づいていくのです。


おわりに

ここまで、
タンパク質という材料が、
眠りとどう関わっているのかを
見てきました。

眠れない夜が続くのは、
気合いや性格の問題ではなく、
材料と、それを活かす仕組みの
どちらかが
不足しているだけかもしれません。

まずは今日の夕食に、
大豆やナッツ、豆腐など、
良質なタンパク質を
ひとつ加えてみてください。

それでも変わらないと感じたら、
自律神経の乱れが
関わっている可能性があります。

そのときは、
RE-SO-LVまでご相談ください。


出典・参考(抜粋)
Sutanto, C.N., et al. (2022) Frontiers in Nutrition.
Zhou, J., et al. (2016) The American Journal of Clinical Nutrition.
Hudson, J.L., et al. (2020) The Journal of Nutrition.
Roth, C., et al. (2021) Frontiers in Sports and Active Living.

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