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『眠りが乱れると、太りやすくなる理由 ― 睡眠と血糖値・インスリンの話』

はじめに

夜、布団に入っても
なかなか寝つけない。

そんな日が続くと、
決まって甘いものが欲しくなりませんか。

「意志が弱いから」

そう感じている方も
多いかもしれません。

ですが、これは意志の問題ではなく、
身体の中で起きている生理現象です。

今回は、3つの視点から
論文データをもとに、
「眠りと体重」の関係を見ていきます。

Ⅰ. 睡眠不足と血糖値・インスリン感受性

「たった数日の
寝不足なら問題無い」

そのように
考えてはいませんか。

睡眠不足の影響は、
思っている以上に早く
身体に現れます。

血糖値を下げるホルモン、
それがインスリンです。

このインスリンが
効きにくくなる状態を
「インスリン抵抗性」と呼びます。

その結果、
血糖値が下がりにくくなり、
余分な糖は
脂肪として溜め込まれやすくなります。

ハーバード大学の研究チームが、
健康な男性を対象に
実験を行いました。

1週間、10時間睡眠を確保した後、
1週間、5時間睡眠に制限する。

結果は、
インスリン感受性が
11〜20%低下しました。

2種類の検査方法で、
同様の結果が確認されました。

「たった1週間」の睡眠不足で、
インスリンの効きは
目に見えて悪くなったのです。

ストレスホルモンの上昇も確認されましたが、
インスリン感受性の低下との
明確な相関はありませんでした。

単純な一つの原因ではなく、
複数の要因が絡み合っていると考えられます。

睡眠不足は、
1週間という短期間でも
血糖代謝に影響します。

これが、
太りやすさの入口に
なります。

次章では、
食欲ホルモンの視点から
「なぜ食べたくなるのか」を
見ていきます。

Ⅱ. 食欲ホルモンの変化

寝不足の翌日、
無性に甘いものが
欲しくなる。

これも、
意志の弱さではなく
ホルモンの変化です。

食欲を抑えるホルモン、
それがレプチンです。

食欲を高めるホルモン、
それがグレリンです。

この二つのバランスが、
睡眠不足によって
崩れます。

1,000人規模の
コホート研究があります。

5時間睡眠の人は、
8時間睡眠の人と比べて、

レプチンが
15.5%減少し、

グレリンが
14.9%増加していました。

満腹を感じにくく、
空腹を感じやすい。

そんな身体の状態が
作られていたのです。

別の実験でも、
同様の結果が
確認されています。

睡眠を制限した日は、
夕方のグレリンが
上昇しました。

そして、
グレリンの上昇幅が大きい人ほど、

間食で摂取する
カロリーも多い
傾向がありました。

「お腹が空いた」という感覚は、
気のせいではなく、

身体の中で
作られているのです。

食欲ホルモンの変化は、
無意識のうちに

食べる量を
押し上げていきます。

次章では、
身体の中で実際に
何が起きているのかを、
もう少し詳しく
見ていきます。

Ⅲ. 身体の中で何が起きているか

ここまで、

血糖値・インスリンの変化と、
食欲ホルモンの変化を
見てきました。

では、
身体の内部では
何が起きているのでしょうか。

鍵となる臓器は、
肝臓と骨格筋です。

通常、
肝臓は血糖値に応じて、
糖を作る量を調整しています。

ですが睡眠不足の状態では、
この調整が
うまくいかなくなります。

必要以上に
糖を作り出してしまう。

これを
「糖新生の亢進」
と呼びます。

一方、骨格筋では、
血液中の糖を
取り込む働きが弱まります。

糖を作りすぎる肝臓と、
糖を取り込みにくい筋肉。

この両方が同時に起こることで、
血糖値は
下がりにくくなります。

さらに、
睡眠にはもともと

身体の代謝を落とし、
エネルギーを節約する
役割があります。

深い眠り(徐波睡眠)のときほど、

この省エネ効果は
大きくなります。

睡眠不足によって
徐波睡眠が減ると、

この本来の
休息機能そのものが
損なわれてしまいます。

つまり睡眠不足は、

血糖値を扱う
複数の仕組みに、

同時に
影響を及ぼしているのです。

肝臓・筋肉・睡眠の質。
これらが同時に関わり合うことで、
太りやすい身体が作られていきます。

次章では、
ここまでの内容を踏まえて、

睡眠を整えるために
できることを

考えていきます。

Ⅳ. 30〜50代男性へ

ここまで見てきた変化は、

睡眠時間が短くなれば、
誰の身体にも
起こり得ることです。

「忙しいから、
睡眠は削るしかない」

そう考える方も
多いかもしれません。

ですが睡眠を削ることは、

代謝の乱れという
コストを支払うこと
でもあります。

食事や運動に
気を配っていても、

睡眠が整っていなければ、

その努力は
発揮されにくくなります。

規則正しい生活は、
もちろん基本です。

ですが、

自律神経が
乱れている状態では、

それだけでは
深い眠りに届かないことも
あります。

鍼灸は、

その自律神経の乱れに
働きかける
選択肢の一つです。

身体の緊張をゆるめ、

副交感神経が
優位になりやすい状態を
つくること。

それが、
眠りの質を底上げする
一つの手段になります。

睡眠は、
食事や運動と並ぶ、

もう一つの土台
なのかもしれません。


おわりに

朝、なんとなく
身体が重い。

夕方、無性に
甘いものが欲しくなる。

そうした小さな違和感は、

睡眠の質を
見直すサインかもしれません。

血糖値、食欲ホルモン、
そして身体の内部の仕組み。

どれも、
眠りと深く
つながっています。

「太りやすくなった」

その背景には、

意志の弱さではなく、
眠りの乱れが
隠れていることがあります。

睡眠を整えることは、

体重だけでなく、

日々のパフォーマンスにも
つながっていきます。

まずは、
眠りに目を向けることから。

それが、
身体を整える
最初の一歩になるはずです。


出典・参考(抜粋)
Buxton, O.M., et al. (2010) Diabetes.
Broussard, J.L., et al. (2016) Obesity.
Taheri, S., et al. (2004) PLoS Medicine.
Mesarwi, O., et al. (2013) Endocrinology and Metabolism Clinics of North America.

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